アトピー性皮膚炎

小児にもデュピクセント導入対応

アトピー性皮膚炎(AD)

当院は外用療法を基本とし、必要に応じて生物学的製剤などの免疫学的治療を併用します。症状・年齢・生活背景に合わせて、過不足のない治療プランをご提案します。

デュピクセント(dupilumab)のご案内へ

アトピー性皮膚炎とは

痒みを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性的な炎症性皮膚疾患です。皮膚のバリア機能低下と、Th2優位の炎症(IL-4/IL-13経路)が関与します。乳児から成人まで発症し、生活の質(睡眠・学業・仕事)にも影響します。

主な要因

  • 皮膚バリア機能の低下(乾燥肌体質)
  • 免疫反応の偏り(IL-4/IL-13を介するTh2炎症)
  • 環境要因:汗、乾燥、摩擦、アレルゲン(ダニ・真菌など)

※汗はADの代表的な悪化因子です。汗中抗原(MGL_1304 等)へのIgE反応や、汗で誘発される痒みが知られています。

検査と評価

  • 皮疹の視診・触診(重症度評価:EASI/SCORADなど)
  • 必要に応じて血液検査(TARC、総IgE など)
  • 接触皮膚炎が疑わしい場合はパッチテスト

治療の基本方針(外用療法が柱)

スキンケア

  • 毎日の保湿(入浴後すぐ・十分量)
  • 適切な入浴・洗浄(擦らない・ぬるめ・短時間)
  • 汗・乾燥・摩擦への対策(通気・吸汗・保護)

薬物療法

  • 外用ステロイド/タクロリムス等を症状に応じて使い分け
  • 寛解維持にはプロアクティブ療法(週数回の外用継続)
  • コントロール不十分な中等症~重症では、生物学的製剤等を検討

治療選択は年齢・体質・既往症・生活状況を踏まえ、過度な強さ/量/期間にならないよう管理します。

デュピクセント(dupilumab)について

作用と位置づけ

IL-4受容体αに結合し、IL-4/IL-13シグナルを抑制することで、アトピー性皮膚炎の中心的な炎症(Th2応答)を鎮めるヒト型モノクローナル抗体です。外用治療で十分な効果が得られない中等症~重症に用います。

小児にも対応

当院は小児にもデュピクセント導入に対応しています。年齢・体重・重症度・既往歴を確認し、適応や投与間隔を慎重に判断します。外用療法と両輪で、安全性の確認と副作用対策を行いながら段階的に導入します。

期待できること

  • 皮疹と痒みの持続的な改善(EASI/SCORADの低下、QOL向上)
  • ステロイド外用量の削減や再燃間隔の延長
  • 長期使用も見据えた管理が可能

主な副作用と対策

結膜炎・眼症状

眼の違和感・充血・乾燥感などが出ることがあります。治療前の眼症状やTARC/IgEが高い場合に起こりやすいとの報告があり、人工涙液などの支持療法や眼科連携で多くは対応可能です。気になる症状は早めにご相談ください。

顔・頸部紅斑(HND)

開始後に顔〜首の紅斑が生じるケースがあり、マラセチア関与が示唆されています。抗真菌外用/内服の併用で改善することがあり、必要に応じて一時休薬や再開の判断を行います。

よくあるご質問

Q. 何歳から使えますか?
海外では小児への適応拡大が進んでおり、国内でも年齢・体重に応じた用法が整備されています。当院では最新の適応・安全性情報を踏まえてご提案します。

Q. どれくらいで効いてきますか?
早期から痒み・皮疹の改善を自覚する方が多く、数か月の継続で重症度指標の明確な低下が期待できます(個人差あり)。

Q. 汗や運動は?
汗は悪化因子になりやすいため、運動後は速やかな洗い流しと保湿、通気性の良い衣類などでコントロールしましょう。

※生物学的製剤はすべての方に必要な治療ではありません。外用療法・スキンケアの最適化が基本であり、導入の要否は診察で総合判断します。

受診の流れ

  1. 初診:経過・生活背景・これまでの治療歴を確認し、皮疹を評価
  2. 基本治療の最適化:保湿・外用計画、再燃予防(プロアクティブ)
  3. 見直し:効果や副作用、通院・在宅ケアの負担を評価
  4. 必要時:免疫学的製剤(デュピクセント等)の適否を検討

まずはご相談ください

小児も含め、一人ひとりに合った計画で進めます。治療歴が長い方、外用が合わない/効きが弱い方、学校や仕事への影響でお困りの方も、遠慮なくご相談ください。